富士見中合唱部のOGで、当音楽教室でレッスンを受けながら今も伴奏・指導補助ボランティアとして練習に参加してくれている石川真優さんが、国立音楽大学に合格しました。
石川さんは、私が外部講師として合唱部の指導に関わることになった時は中学二年生でした。その時の三年生は数ヶ月で引退になったので、私が一年以上関わった最初の学年になります。
その年はちょうどコロナ元年で、三か月の一斉休校や、緊急事態宣言による度々の部活動停止がありました。本当に大変だった中で最後まで折れずに頑張ってくれた、思い出深い一期生たちの1人です。
今でも思い出すのは、Nコンの伴奏を「私に弾かせてください」と直談判してきたことです。
今コンクールで中学生の部員が伴奏することは稀で、多くの学校は外部から大人の伴奏者を呼んでいます。
石川さんは歌も上手でしたし、部員も多くない中で、伴奏は別の人に任せようと思って本人にもそう伝えたのですが…しばらくしてから本人から弾きたいと申し出てきました。
素直で責任感があり、粘り強く物事に取り組める子でしたが、意思表示や自己表現は苦手なのかな?と感じていたので本当に意外で、その時「きっとこの子はこれから伸びる!」と感じたのをよく覚えています。
卒業の際には「伴奏ボランティアとして富士見中合唱部に残って、ここで学びたい」と申し出てくれました。本当にびっくりしました。
嬉しかったですが、高校ではまた高校の部活の良さもあると思ったので、高校の部活も見てから考えたら?と伝えたのですが…
高校に入学してもその気持ちは変わらず、部活に入らず富士見中の合唱部で合唱や指導を学びたいと、はっきりと意思を伝えてくれました。
そのような子は今まで誰もいなかったので、手続きや学校間の協議なども時間がかかりました。でも最後は本人の意思が学校や先生方を動かし、「伴奏・指導補助ボランティア」としてこの2年半合唱部や部員を支えてくれました。
今年の長野県合唱コンクールでは、富士見中と富士見小の両校の伴奏を務めました。高校生の伴奏者ですら珍しいのに、同じコンクールで二校受け持つ伴奏者は大人含めもちろん他にはいませんでした。
富士見小は金賞で全国大会へ進み、富士見中は銅賞でしたが5人の審査員全員から非常に高い評価をいただきました。石川さんの歌う人に寄り添い、歌う人の力を引き出す伴奏のおかげです。
そんな石川さんの中学、高校の成長を間近で見てきて、
「意志あるところに道は拓ける」
という言葉が浮かびました。
どんなことがあっても折れず、粘り強く、環境や他人のせいにせず、やると決めたことをやり抜く姿を見てきました。人間的な成長が音楽にもちゃんと表れて、音大の試験や面接でも高く評価していただいたのだと思います。
そして石川さんは「みんなが幸せになれて、自分も幸せになれる」という価値観を持っています。
「自分が良ければそれでいい」というような人が増えてきた今の社会で、ちゃんと相手の気持ちを尊重し、敬意を持ち、そして自分も大切にできる人間性が本当に素晴らしいです。私も見習おうと思うことがたくさんあります。
これからもたくさんのことを学んで、大きく大きく羽ばたいてほしいと思っています!
私にとっても富士見に来て教えた子では2人目、富士見中合唱部の部員では初めての音大生となりました。一つ美しい花が咲いた、そんな気持ちです。
私自身が中学生の時にターニングポイントがありました。それは後から分かったことで、その時はただ必死で気がつきませんでしたが。今度は私が子どもたちの力になり、富士見の子どもたちが、幸せや夢を掴むきっかけになれればと思って関わってきました。
これからも子どもたちが自分らしく表現し、たくさんのことを経験することで、その中で何かそれぞれの夢を掴めるようにたくさんのサポートをしていきたいです。
中学校の三年間は子どもにとっては、イモムシから蝶になるくらい大変で大事な三年間。思い通りにいくことばかりではなく、みんなたくさんの壁に当たります。
そんな時にも折れずに粘って、誰かに生かされるのではなく自分自身を生きていけるように。転ばないように生きるのではなく、何度転んでも立ち上がる子に育ってほしい。時に心から励まし、時に真剣に叱り、共に成長しながら、子どもたちを支えていきたいと考えています。